Nao
①この職業に就いたきっかけ。
元々は経理の仕事をしていましたが、東日本大震災をきっかけに転職を決めました。
実家が宮城県石巻市にあるのですが…震災直後は誰とも連絡が付かず、深い絶望を体験しました。幸い1週間後に親戚からの伝言で、無事に家族の生存確認が取れました。この一連を通し擬似的に家族の死を体験し、今日にでも自分自身に同じことが訪れる可能性があることを実感することができました。
それからは、ダメでもともと。チャレンジせずに終わりたくない。やってみたけどダメだったと言える人生を送りたい。失敗しても死にはしない。そんな気持ちに切り替わり、一生勤める予定だった会社を退社して夢で終わらせる予定だった今の仕事にチャレンジすることにしました。
②何故、ウェディング業界を選んだのか。
友人の結婚式に参加するタイミングで初めて一眼レフを買い、温かな1日を撮った写真からスライドショーを作成しました。経理の仕事を終えた後、夜中まで夢中になって。。そして出来上がったスライドを夫婦に見せた時に2人が涙してくれた経験が忘れられません。
結婚式って1日の中に泣いたり笑ったりと緩急が激しく、感情の波が大きく揺れるものです。イベント毎の多い学生生活で感じたワクワクや青春時代の甘酸っぱさ悔しさ…大人になると少しずつ感情の波も平坦になる気がしますが、結婚式では老若男女問わず皆の感情が動くんです。その時間をその一瞬を捉え、その人の未来に届け、一枚の写真でその時の感情を思い出して欲しいと思ったからです。当たり前の日常と関係性の中にある幸福に気付き、生涯その人の人生の支えになるものを結婚式は与えてくれるのだと思っています。
③高校を出てから今までの経歴を簡単に教えて下さい。
○18歳 地元宮城の大学へ進学
事業構想学部という名前の変わった学部へ入学。
ビジネスについて悪い印象がついて拒否反応が出ました。笑
○22歳 それを克服すべくあえて不動産の会社に入るもすぐ辞める
営業に対するどこか後ろめたさを抱えていたのかも知れません。
○23歳 経理の仕事に就く
小学生から今でもずっと家計簿をつけるくらいなので性に合っていました。
今でも個人事業主として経験が活きてます。
○震災を経験し転職、27歳でカメラを買う
式場内の新規の写真事業部に入り2年活動(1年でデビュー)
その後フリーランスとして独立し、撮影会社に所属中。
④実際に今の職業をする中での
【醍醐味】
やっぱり一番は「Naoさんで良かった!」と言ってもらえることです。
【大変なこと】
表現の世界なので決まった正解がないこと。
お客さんの求めていることはそれぞれなので、好きな写真・嫌いな写真を言語化して貰いながらヒアリング、ニーズを掴んでいます。
【工夫していること】
お客様のことをよく知ること。
どんな料理が喜ばれるか、どんな料理は好みでないか、同じ人でも甘いものを食べたい時もあればしょっぱいものを食べたい時もあります。流行りのスイーツは喜ばれることが多いです。写真も同じだと思うので、そういったお客様のお好みを事前のヒアリングで深掘りしています。
⑤あなたの思うこの職業に向いている人はどんな人ですか?
・自分の味よりお客様の好きな味を提供してあげられる人。
・写真撮影よりその瞬間や体験を大切にできる人。
一見見落としがちですが、ウェディング撮影で一番大切なのは上手に写真を撮ることではありません。良い写真を追求しすぎて、自己満足に終わってはいけません。この仕事が接客業であることを理解し、お客様の満足を最優先に考えて撮影そのものを楽しく充実した時間に出来ること。撮影が楽しいとその時間も含め、写真の価値が上がるのだと思っています。
⑥その職業にはどうやったら就けますか?(知る限りのいろんな方法を提示お願いします)
・専門学校に通う
・師匠と呼ばれる人に教わる
・ブライダル会社に入社する
フリーで活動するなら今日からでもなれます。
⑦学生のうちに自身が
【やっておいて良かったこと】
数学や会計の勉強。
フリーのカメラマンは芸術肌の方が多いのでこの辺がルーズな印象があります。
その点でお仕事をご一緒させていただく際にクライアントからの信頼は得やすいと思っています。機材の細かい話や画像処理の話になると理系の頭は活きてくるなと感じます。
【やっておけば良かったこと】
地理や歴史→初めての土地に赴く際、歴史や文化について知識があると新郎新婦とも話が盛り上がりますし、クリエイティブな提案が出来ます。
国語→自分を表現するためには言語化能力の大切さを感じます。会話中、話の要点をすぐに掴んで的確な提案をするにも役立ちます。
英語→使えればそれだけで国際カップルから選ばれやすくなります。全ての勉強をもっとしておけば良かったと思います。笑
ちなみに美術などの仕事に直結している仕事は就いてから強制的に勉強するので誰でも身につきます。一見関係ないと思える勉強の方が差別化の要因となり社会に出てから重宝されます。
⑧今後の自身の展望やビジョン
今はフリーランスですが、いずれはチームや会社にしたいです。
あと個人的な夢は世界のウェディング写真集を作ることです。
⑨ウェディングを目指す学生に向けたメッセージを自由にお願いします。
僕は経理で生きていくつもりでしたが、結婚式のカメラマンをしています。そしてこの仕事以上に最高な仕事はないと心から思っています。同じウェディングでもプランナーはやりたくないですし、ヘアメイクなんてとんでもないです←失礼。
それぐらいこの仕事しかないと思えるものに出会ってほしいです。プランナーを目指す方はそれ以外考えられないと思っていてほしいです。ヘアメイクを目指す方は他の仕事をしている人を内心ヘアメイクしないなんてもったいないと思えるぐらいになってほしいです。僕はそれぐらいこの仕事しかないと思っています。そうなるまで自問自答してみてほしいなと思います。
ーインタビューを終えてー
学生の皆さんには先ず、増子さんの撮る写真を見て欲しい、そう思う。
地元の被災が彼のターニングポイントになっていたこと。日本中を大きく揺るがした東日本大震災で被災地が地元だなんて…私もインタビュー中に言葉を失う思いがした。(経験したからこそ語れる沢山の言葉が増子さんのHPに在る。こちらも是非ご一読して欲しい。https//……)
ただ、よくぞ、夢を夢で終わらせないでいてくれたと言いたい。増子さんの写真ってどこか哀愁と温かみを感じる本当に素敵な写真で、それを受け取り感動されるお客様が沢山いるの。。
才能が眠ったままにならず、開花し誰かの笑顔を生み出すのに必要だったこと =それは1歩を踏み出す勇気と決断に尽きる。予想もしないような大きな出来事で、自分の心の声に忠実になれた事って私にも経験がある。1度きりの人生をどう生きるのか、全員が問い続けるものだろう。学生の皆さんには、彼が写す温かい写真に、夢を叶える勇気とその先にある充実まで見て欲しいと思う。
roomN°6 ヘアメイク 西山由記